この「スッタニパータを読む」の方に訳文を掲げました、ここに再び出しておきます。 |
|
a. |
わたしはあなたに「生き方」を説きます。メッタグーさん、と師は言いました。 |
|
b. |
先入知識で「生き方』を見て、あれこれ語らないようにします。 |
|
c.d。 |
このことを知って、気をつけながら、世間の執着を乗り超えて行くのがよいのです。 |
|
|
|
|
パーリ文を下にあげました。 |
|
1053 |
|
|
|
a. |
"Kittayissāmi te dhammaṃ, Mettagū ti Bhagavā |
|
|
b. |
diṭṭhe dhamme anītihaṃ |
|
|
c. |
yaṃ viditvā sato caraṃ |
|
|
d. |
tare loke visattikaṃ." |
|
|
ポイントとなる語彙とその意味を三つあげます。 |
diṭṭhe (diṭṭha)…… |
「先入知識で見たこと」※別掲に少し詳しく述べます |
damme (dhamma)… |
「生き方」。※別掲に少し詳しく述べます |
anītihaṃ……… |
「あれこれ語ることがない」。itihaṃ→iti 'haṃと見るのが妥当だと思われます。これは"iti 'han "として783に出てきます。自己主張することです。 |
この三つの語彙ともb行にあります。a,c,d 行については、特に問題ではありませんので、b行だけを取上げます。
diṭṭhe dhamme anītihaṃ
日本語をそのまま置いていくと次の括弧の中になります。その下に書いたのが訳になります。
(先入知識で見た 生き方を あれこれ語ることがない)
生き方を先入知識で見て、あれこれ語らないようにします。
ところが、一般的には次のような訳に近いものが多いようです。
(見た 真理を 伝聞によらず)※dhamma=真理 とした場合
伝聞によらず、真理を見た。
この訳では、あまりに語彙の意味範囲を大きく取り過ぎです。一見魅力ある言葉になっていますが、ブッダが指摘するところの「 diṭṭha(あるいは diṭṭhi)の問題点」、これは第4章、第5章で多く語られています。それを把握した上でこの1053の訳に対応させるのが正しいやりかたです。
そうでないと、このような大変な誤訳になってしまいます。
-1-(次のページへ) |