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2011年10月27日(木)   <<BACK>>

回顧録ー(1)

 今日は朝から清々しい天気である。顔にあたる空気が気持ちよかった。久しぶりにホテルオークラ神戸のカフェレストラン「カメリア」へ行った。車を持っていた頃、よくコーヒーを飲みにきていた。コーヒーの値段がそれほど高くなかったこと、駐車券をもらえることがうれしかった。メリケンパークと海が見え、決して豪華ではないあっさりした室内が気に入っていた。ここで原稿を書くのが好きであった。
 わたしが『スッタニパータ』に関わってから気がつけば、もう20数年になる。学生時代は法学部で仏教とは全く関係なかった。それでも他の大学の友人には仏教に関心のある人がいて、芦屋の奥にあるユースホステルに四、五人ほどで一泊しては話し込んだのを覚えている。恐らくもっと前、わたしが四、五歳の時に奈良のお寺に行ったことが、仏教に親近感をもつきっかけとなっていたのではないかと思う。
 わたしには三人の姉がいる。女三人、男一人である。わたしがまだ幼稚園の時分から、家族全員で奈良のお寺へ行くことが度々あった。今でも薬師寺と唐招提寺は薄らと記憶にある。父は特に薬師寺の東塔を大変気に入っていた。わたしがなぜそうしたのか、今となっては分からないが、ちょっとの時間、お堂の中で一人、正座をしていたようだ。
 唐招提寺では壊れた仏像を一カ所にまとめて置いていた。近い仏像は廊下から簡単に触ることができた。わたしが手を伸ばしたのは頭部がなく、顔料もはげ落ちた仏であった。やさしい木肌の感触とともに温かさが伝わってきたのを覚えている。
 父は仏教の教理というより造形美のほうに魅かれていた。でも晩年食道がんを患った時は、教理に全く踏み込まなかったことを少し後悔していた。一緒に高野山へ行くことなったのは亡くなる二年前のことであった。

ホテルオークラ神戸 カフェレストラン「カメリア」の窓からメリケンパークと海が見える
Oct.27,2011,in Kobe
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