2009年01月20日(火)   <<BACK>>

丑年はゆっくりと

 正月2日の夕方、うとうとしながら、浮かんできたイメージの中に遊んでいた。天空に牛座があった。牡牛座は頭から前足付近までだが、牛座は頭から尻尾までの全身の輪郭が星で結ばれている。その牛はゆっくりと歩き始めた。一歩また一歩と。まさしく「牛歩の歩み」だ。 しかしこの牛の一歩は太陽系、いや銀河系さえもひとまたぎである。それに比べ地球、そして日本の高速道路を走る車、新幹線などはミジンコの動きである。あわただしいが、ただそれだけで、進んでいるようで、実際はあまり進んでいない。
 昨年12月24日に大阪で手術をした。耳下腺が大きくなったので、それを除去する手術を受けたのだ。この辺りは顔面神経が通るところで、医師は腫瘍にくっついた神経を根気よく取ってくれたが、少しその時にキズがいったらしい。左顔面が麻痺になった。特に目は完全に閉じることができないので、眼帯をしている。非常に不便であるが、慣れるしかない。速く動くことはあきらめて、ゆっくり歩くようにした。特に階段の手前では一度止まって、確認してから昇り降りするようにしている。このような生活をしてもう二週間になるが、よく見えない反面、よく見えることにも気がついた。新幹線でも、走っている時は、速すぎて線路脇の家や道路はほとんど見えない。これと同じように普段見落としていたものが、スピードを落とすことで実によく見えるのだ。
 見ているつもりが、見えていない、そうであった自分に気がついた。そしてほとんどの人もそうではないかと思うのだ。
  「そんなもの見て、それが何になるのか」と言う人もいるかも知れない。しかし、今の自分とその周りを見なくて、一体、何を見ようとしているのだろうか。
 今年はゆっくり歩くことをこころがけたい。

 

 

     

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