2008年05月06日(火)   <<BACK>>

坂道

 この五月の連休は、曇りと晴れの日がはっきりした天候であった。朝、高台にある病院への坂道をゆっくり歩いていた。先月の18日、卒寿をむかえようとする母が脳出血で入院したのだ。
 その病院へはタクシーやバスで行くことが多いのだが、最近は歩いて行くこともある。バス道は蛇行しているが、その少し西側には、ほぼまっすぐに高台へむかう道がある。かなり急な坂で、人も車も通れる舗装した道でありながら、これほど勾配のあるものは記憶にない。
 今の時期は木々が空気を浄化してくれるようで、気持ちがよい。往きは一歩一歩と、少し汗をかきながら足を踏み出すが、帰りは往き以上の用心深さが必要だ。足の関節についた筋肉を不用意にゆるめてしまうと、バランスを崩して二十メートル位は転がっていきそうである。
 でも、地元の人は慣れたもので、歩幅を小さくして半ば走るようにして、降りていくのだ。
 仏典では、日常生活における用心深さを説くものが多い。「注意を保つ」という意味をもつものに sati という言葉がある。私たちには平坦な道に見えても、ブッダにはこのような急な坂道であるのだろう。
 ブッダには、処する私たちの心を看破する眼がある。

 


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