2004年06月06日(日)   <<BACK>>
【閑話】映画「マトリックス」

 もう半年位前になるが、映画「マトリックス レボルーション」が上映されていた。「マトリックス」はこれが第三作目であり、完結編ということになる。今頃、なぜ「マトリックス」?と思われる向きもあろうが、数日前、近くの本屋さんで青土社から出ている月刊『現代思想』のフェアをしていて、たまたま「マトリックスの思想」を特集にしている本年度1月号に出くわしたからだ。実は「マトリックス」については、以前メールを通 じて人に講釈を垂れたことがあったが、ほかの人はどういう感想をもったのだろう。どう理解したのだろうという関心をもち続けていた。読んでみて「なるほど」という思いと、「ここまで突っ込むか」という変な感動が入り交じった気持をもった。理屈の世界に引き込まれそうなところもあったので、今はこの本とは少し距離を置いている。
  筆者が「マトリックス レボルーション」を観終ってからも興味をもったのは、内容もさることながら、音楽に由来するところが大きい。映画が終了し、ボッーとした私の頭にエンディングの音楽が延々と流れていたが、聞いている内に「はて、これは英語ではない。まさかサンスクリットでは?」と思い始めたのだ。程なくサンスクリットであることを確信したのだが。「オーム シャーンティ」という唱和も途中に入れられていた。後日、調べてみると、唱われていたのはインド古典思想の基盤ともいうべきウパニシャッドであった。『イーシャー・ウパニシャッド』、『カタ・ウパニシャッド』、『ムンダカ・ウパニシャッド』、『ブリハドアーラニヤカ・ウパニシャッド』が唱われていた。その中でも女性の声で何度も繰返して唱われているのが『ブリハドアーラニヤカ・ウパニシャッド』の1.3.28であった。 和訳してみた。          

    過った考えから真理に私を導け!
    暗闇から光に私を導け!
    死から不死に私を導け!

(註)『ウパニシャッド』。 インド思想の土台というべきもので、特に『ブリハドアーラニヤカ・ウパニシャッド』や『チャーンドギア・ウパニシャッド』は古く、ブッダ以前よりあったと言われている。ブッダが紀元前500年頃に活動していたことを一つの指標にすると、大体の時代が分かる。ブッダ以降のものにはマーンドゥーキヤ・ウパニシャッド等がある。『ウパニシャッド』は叡智の宝庫と言ったらよいだろう。(参考:中村元著『インド思想史』岩波書店)

→歩いていてきれいな花があったので、カメラに収めたが、「何の花なんだろう」と近寄ってみると、ちゃんと棘があった。バラの種類でした。


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